ディーゼル自動車は燃費が良くトルクも高いという利点がありますが、日常の手軽な使い勝手を求める人には注意が必要です。
エンジンやDPFに煤が溜まりやすくなり、エンジンの出力低下や異音、排気異常などの症状が現れることがあるからです。
そのため、定期的なメンテナンスや運転スタイルの見直しが重要です。
ディーゼル車を選ぶ際には、メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解し、適切な対処法を知っておくことが、安心で快適なカーライフを送るため必要になります。
目 次
ディーゼル車の使い勝手を考える|その特性は?

燃料費が安く済む
ディーゼル車の最大の魅力の一つは、燃料費を抑えられる点にあります。
まず、ディーゼルエンジンは燃焼効率が高く、ガソリンエンジンに比べて実燃費が良いことが多いです。
例えば、マツダCX-5の例では、ガソリン車のWLTCモード燃費が約14.6km/Lなのに対し、ディーゼル車は約17.4km/Lと約20%以上良い数値を示しています。
また、軽油は一般的にガソリンよりも1リットルあたり10円から20円程度安く設定されているため、燃費性能の良さとあわせて給油コストを大幅に節約できます。
実際に1000km走行した場合、ディーゼル車の燃料費が約9,200円前後に対し、ガソリン車では約11,000円を超える計算となり、数千円単位の差が生じることも珍しくありません。
このように、ディーゼル車は燃料の燃費性能と単価の安さの両面から、日々の燃料費を効率良く抑えられるため、特に長距離走行が多いユーザーや業務用として使う場合に経済的なメリットが大きいと言えます
力強い走り
ディーゼル車の最大の特長は、何といっても低回転域から発揮される「力強いトルク」です。
ガソリンエンジンに比べてディーゼルエンジンは、発進時や坂道での加速など、車が重い状況でも十分なパワーを確保しやすいのが特徴です。
たとえば、トヨタ・ランドクルーザーに搭載される3.3リッターのディーゼルターボエンジンは、最大トルク700Nmを1,600~2,600回転の低回転域で発揮し、日常のあらゆるシーンで余裕のある走りを実現しています。
この豊かなトルクは、特に荷物を多く積む業務用途や長距離ドライブ、悪路走行においても力を発揮し、車両の扱いやすさや安全性を高めています。
また、エンジン回転数を無理に高めなくてもスムーズな加速が可能なため、運転の疲労軽減にもつながります。
耐久性の高さ
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて頑丈に設計されています。
燃焼時の圧縮率が非常に高いため、エンジン内部のブロックやピストン、クランクシャフトなどの主要部品を強固に作らざるを得ず、その結果として長寿命を実現しています。
適切なメンテナンスを行えば、乗用車のディーゼルエンジンでも20万kmから30万kmは十分走破可能であり、大型トラックやバスでは50万km超え、さらには100万km、200万km以上走る車両も存在するほどです。
また、ディーゼルエンジンはスパークプラグを使わず、空気の圧縮熱で燃料を点火するシンプルな構造のため、故障のリスクも比較的少なく、部品点数が少ないことも長寿命に寄与しています。
長距離走行の利点
ディーゼル車は燃費が非常に良く、長距離を走る際の燃料補給の回数を減らせるため、遠出や長時間のドライブに適しています。
一般的にガソリン車と比べ、同じ走行距離でも20~30%ほど燃料消費を抑えられるのが大きなメリットです。
このため、燃料代の節約につながり、経済的負担が軽減されます。
また、ディーゼルエンジンは低回転から高トルクを発揮する特性があり、高速道路での合流や追い越し、重い荷物を積んだ状態での走行も安定してスムーズにこなせます。
トルクの太さは長距離走行の疲労軽減にも貢献し、アクセルペダルを強く踏み込む必要がないため運転が楽になるのも魅力の一つです。
さらに、長距離を中心に使うことでエンジンの温度が適切に保たれ、ディーゼルエンジン特有の煤(すす)などの堆積も抑えられ、性能劣化やトラブルのリスクを減らせます。
そのため、ディーゼル車は年間走行距離が多い人や長距離移動の多い業務用途に特に向いています。
ディーゼル車の使い勝手を考える|注意点は?
ディーゼル車の使い勝手を考える上で、注意するべき点もあります。
ガソリン車にはないディーゼル車特有のものですので、解説します。
煤の溜まりやすさ
ディーゼル車の使い勝手を考える上で避けて通れないのが、排気系統に煤(すす)が溜まりやすいという問題です。
ディーゼルエンジンは燃焼温度がガソリンエンジンに比べて低く、不完全燃焼が起きやすいため、煤が発生しやすい特徴があります。
この煤はDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)と呼ばれる微粒子捕集フィルターに捕らえられますが、短距離走行ばかりでエンジンが十分に温まらないと、DPFの再生(高温で煤を燃焼させる機能)が正常に作動せず、煤が蓄積してフィルターが詰まる原因となります。
車両価格が高め
ディーゼル車は燃費性能やトルクの強さで優れる一方、車両価格がガソリン車より高めに設定されている点が注意すべきポイントです。
たとえば人気SUVのマツダCX-5では、ガソリンモデルが約290万円に対し、ディーゼルモデルは約320万円と約30万円の価格差があります。
また、トヨタ ランドクルーザー250や輸入車のディーゼルモデルでは、新車価格が500万円以上と高額になるケースも多く見られます。
この価格差は、ディーゼルエンジン自体の製造コストが高いことや、排ガス浄化装置(DPFや尿素SCRシステムなど)を搭載していること、安全・環境性能を高めるための技術的負担が増していることが背景にあります。
そのため、購入時の初期投資は高くなりますが、年間の燃料代が軽油の安さや優れた燃費で減るため、長く乗る場合は総合的にコストを抑えられることもあります。
騒音や振動が大きい
ディーゼル車の使い勝手で注意すべき点の一つに「騒音や振動の大きさ」があります。
これはディーゼルエンジンの燃焼方式に起因しており、ガソリンエンジンとは大きく異なる特徴です。
ディーゼルエンジンは、圧縮した空気に軽油を噴射して自然発火させるため、燃焼時のシリンダー内の圧力が非常に高くなり、その急激な爆発により強い振動と独特の燃焼音が発生します。
この燃焼の仕方は、一気に燃料が燃えるため、「ガラガラ」や「ジャージャー」といったざらついた音が出やすいのです。
特に低速走行時やアイドリング状態では、この騒音や振動が車内に伝わりやすく、長時間の運転や渋滞時にストレスを感じることもあります。
しかし近年ではエンジン設計の改良や遮音材の採用、防振構造の強化などにより、かつてほど騒音・振動は目立たなくなってきています。
独特な排ガス臭がある
ディーゼル車にはガソリン車にはあまりない独特の排気ガスの臭いがある点に注意が必要です。
これはディーゼルエンジンの燃焼過程で発生する未燃焼成分や有機酸、さらには触媒やDPF(ディーゼル微粒子フィルター)の機能が十分に働かない場合に生じる場合があります。
特に寒冷時や短距離走行でエンジンが十分に温まらない状況では、酸っぱいような「酢酸」に似た刺激臭を感じることが多くなります。
また、一部のディーゼル車では尿素SCRシステムによる排ガス処理の過程で、間欠的に甘酸っぱい臭いが発生するケースも報告されています。
これは触媒劣化の可能性や排出物の成分変化によるもので、常に発生するわけではありませんが気になる場合は点検が必要です。
ディーゼル車が向いている人

ディーゼル車は、以下のような人におすすめです。
長距離運転が多い人
ディーゼル車の最大の強みは燃費の良さと高いトルクです。
特に、年間の走行距離が多く、長距離運転を頻繁に行う方にとっては非常にメリットが大きいと言えます。
また、ディーゼル車は低回転域で強いトルクを発揮するため、高速道路の合流や追い越し、荷物を満載した状態や坂道でも力強く安定した走行が可能です。
これにより長距離運転時の疲労も軽減できる点も魅力の一つです[1][3]。
さらに、ディーゼルエンジンは構造が頑丈で耐久性が高く、20万km以上の過走行にも耐えうるため、長く安全に乗り続けられます。
年間1万5千km以上の長距離走行者や、仕事で長時間の運転が多い方にとっては、購入時の車両価格やメンテナンス費用を燃費の良さで十分にカバーできる可能性が高いです。
トルク重視の人
ディーゼル車の大きな魅力の一つは、ガソリン車に比べて低回転域から強力なトルクを発揮する点です。
トルクとはエンジンの回転力のことであり、これが大きいほど発進や坂道での加速がスムーズで力強くなります。
この特徴は、重い荷物を積んだ状態や悪路での走行、雪道やぬかるみのような滑りやすい路面でも車両を安定して動かすのに非常に役立ちます。
そのため、力強い走りや確実な牽引力を重視する方、パワー不足を感じやすい人にとってディーゼル車は非常に向いています。
さらに、ディーゼルは燃料の発熱量がガソリンより高く、高圧縮による燃焼効率の良さも反映しているため、燃費性能とパワーのバランスが優れているのが特徴です。
力強いトルクを活かし、荷物を運ぶ業務用途やアウトドアなどで活躍する一台としておすすめできるでしょう。
きちんとメンテナンスができる人
ディーゼル車は構造が頑丈で耐久性に優れる一方で、適切なメンテナンスが必要になる車種です。
特にディーゼル特有のDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)の再生機能やインジェクター、ターボチャージャーの点検は重要で、定期的なチェックが必要不可欠です。
エンジンオイルも専用の高性能オイルを使用し、ガソリン車よりも短めの距離(5,000~7,000kmごと)での交換を推奨します。
劣化したオイルを使い続けると、エンジン内部にスラッジが溜まりやすくなります。
また、DPFの詰まりは燃費悪化や出力低下につながります。
警告ランプのチェックや異常を感じたら、早急に整備工場で点検を受けることが大切です。
ディーゼル車が向いていない人

ディーゼル車は、以下のような人におすすめできません。
短距離走行が多い人
ディーゼル車は燃費性能やトルクの強さが大きなメリットですが、一方で短距離走行が多い使い方にはあまり向いていません。
その主な理由は、ディーゼル車に搭載されているDPF(ディーゼル微粒子フィルター)という排出ガス浄化装置の特性にあります。
DPFは走行中に溜まった煤(すす)を高温で燃焼させて除去する「再生」機能を持っていますが、この再生には一定の走行時間や速度が必要です。
具体的に言うと、短時間(10分以下)や低速(約15km/h以下)の走行を繰り返すと、DPFが十分に再生できず煤が蓄積してしまい、詰まりの原因となります。
こうした状態が続くと、結果的にメンテナンス費用がかさむことになります。
また、街乗り中心の短距離走行ではエンジンが十分に暖まらず、燃焼効率が落ちることで排気臭が強くなったり、燃費も本来の性能を発揮しにくくなります。
これらの理由から、日常的に近距離のちょい乗りが中心で走行距離が少ない方にはディーゼル車は不向きといえます。
静粛性を重視する人
ディーゼル車はエンジンの燃焼方式の違いから、ガソリン車に比べて騒音や振動が大きい傾向があります。
特に燃焼が急激に進むため、「ガラガラ」や「ジャージャー」といった独特の燃焼音が発生しやすく、これが車内にも伝わりやすくなります。
近年のディーゼル車は技術の進歩により静粛性は向上し、エンジンノイズや振動もかなり抑えられています。
それでも完全にガソリン車並みの静かさには届かず、静粛性を最優先に考える方には向いていません。
特に街乗りや短距離走行が多い場合、エンジン音や振動に敏感な方はストレスを感じやすいでしょう。
静かな乗り心地や快適なドライブ環境を重視する人は、ガソリン車やハイブリッド車のほうが適しているため、ディーゼル車の購入を検討する際は必ず試乗して音や振動の感じ方を確認することをおすすめします。
メンテナンスに時間が取れない人
ディーゼル車は、専門的でこまめなメンテナンスが不可欠な車種です。
特に、専用の高性能オイル交換はガソリン車より短いサイクル(5,000~7,000kmごと)で行う必要があり、DPF(ディーゼル微粒子フィルター)の点検・清掃も定期的に(3万~5万km、または年1回程度)業者に依頼するなど手間と時間がかかります。
また、DPFの詰まりや再生に関するトラブルは修理費用も高額になるため、異変を感じたら速やかに点検やメンテナンスを受けることが重要です。
さらに、インジェクターやターボチャージャーなどのパーツも定期的なチェックが欠かせません。
日常的に忙しく、車の状態を細かく確認したり、定期的な整備に時間を割けない方にはディーゼル車の特徴に伴う手間が負担になる怖れがあります。
ディーゼル車の使い勝手を考える|メンテナンスについて

ディーゼル車の場合、定期的なメンテナンスが非常に重要です。
エンジン内部の煤を除去するディーゼルエンジン専用のメンテナンスや、燃料フィルターの交換などが必要です。
またSCRシステムを搭載する一部の車種では、アドブルーの管理も必要になります。
煤が溜まるとどうなる?
煤がエンジン内部やDPFに溜まると、以下のような問題が発生します。
・ 出力の低下
エンジン内部が煤で詰まると、燃焼効率が低下し、エンジンの出力が低下します。
加速が鈍くなったり、速度が遅くなったり、パワー不足を感じられることがあります。
・ 燃費の悪化
エンジン内部に煤が貯まると、燃費が悪化する傾向があります。
同じ距離を走っても、ガソリンの消費量が増えるなどの症状が現れます。
・ 白煙や黒煙の排出
煤が溜まると、排気マフラーから白煙や黒煙が排出されることがあります。
特に加速時や、負荷がかかった際に、顕著になることがあります。
・ エンジンの振動や揺れ
煤が適切に燃焼されないと、エンジンの振動や揺れが増加することがあります。
特にアイドリング時や、低速走行時に感じやすくなります。
・ エンジンの異音
煤が原因でエンジン内部の部品に異物が付着し、異音が発生することがあります。
例えば、ノッキング音や不規則な音がする場合があります。
エンジン内部やDPFに煤が溜まることを防ぐためには、長距離運転を定期的に行うことが重要です。
高速道路などでエンジンをしっかり回すことで、煤を燃焼し排出することができます。
SCRシステムってどんな装置?
従来のディーゼル車は、NOxを削減するためにハニカム構造のディーゼル酸化触媒(DOC)とDPF(煤除去フィルター)を使用していました。
しかし、より効果的なNOx削減技術として、アドブルーを使用したSCRシステムが導入されました。
SCRシステムは、NOxを90%以上削減することができ、環境負荷を大幅に低減することができます。
また、DPFの詰まりを防ぐ効果も期待できます。
アドブルーってどんな液体?

アドブルーは、高品位尿素水(純水67.5%、尿素32.5%)を主成分とした無色透明の液体で、SCRシステムと呼ばれる排ガス浄化装置に使用されます。
このシステムは、ディーゼル車から発生する有害物質である窒素酸化物(NOx)を無害な窒素(N2)と水(H2O)に変換し、大気汚染や酸性雨を抑制する役割を果たします。
アドブルーの使用量は?
ディーゼル車の排出ガスをクリーンにする尿素SCRシステムに使用されるアドブルー(AdBlue®)の消費量は、軽油の消費量の約3%が一般的な目安です。
つまり、軽油100リットルを使うと約3リットルのアドブルーが必要になります。
この割合から、アドブルー1リットルで概ね1,000km走行できる計算です。
実際の補充サイクルは車種や使用状況によって異なりますが、例えば乗用車やバンの場合は6,000~12,000km走行ごと、小型トラック(約2トン)は12,000~27,000km、中型トラック(約4トン)は26,000~36,000km、大型トラック(約10トン)では35,000~55,000kmごとの補充が目安となっています。
アドブルーは尿素水溶液で、劣化しやすいため高温多湿を避けて保管し、また消費が減ると車両の警告灯が点灯します。
したがって、定期的な残量確認と適切なタイミングでの補充が重要です
アドブルーの注意点は?
排ガス浄化に重要な役割を果たすアドブルーですが、取り扱いにはいくつか注意点があります。
1. 凍結に注意
アドブルーは尿素水溶液のため、氷点下になると凍結します。
凍結すると、SCRシステムが正常に作動しなくなる可能性があります。
特に寒冷地では、凍結防止対策が必要となる場合があります。
2. 適切な保管方法
アドブルーは、直射日光を避け、涼しい場所で保管する必要があります。
高温多湿の環境下では、品質が劣化し、効果が低下する可能性があります。
また、密閉容器に入れて保管し、異物混入を防ぐように注意しましょう。
3. 誤って他の液体と混ぜない
アドブルーは、軽油やガソリン、その他の液体と混ぜてはいけません。
補充の際は、必ず専用のノズルを使用し、他の液体と混ざらないように注意しましょう。
4. こぼした場合の対処
アドブルーをこぼしてしまった場合は、速やかに水で洗い流してください。
特に塗装面や樹脂パーツに付着した場合は、すぐに拭き取ることが重要です。
5. 補充は余裕を持って
アドブルーの残量が少なくなると警告灯が点灯しますが、警告が出てからすぐに補充できない場合もあります。
日頃から残量に気を配り、余裕を持って補充するように心がけましょう。
6. 定期的なメンテナンス
SCRシステムは、定期的なメンテナンスが必要です。
信頼できる整備工場で、定期的な点検を受けるようにしましょう。
総括│ディーゼル車の使い勝手を考える
ディーゼル車は煤を排出するため、適切に煤を管理する考えを持つ必要があります。
その第一歩は、高速道路などでエンジン回転を高めに走り続けることですが、たまにしか高速を使わない、という方もいます。
近くのコンビニや郵便局に行ったりするのに乗るのがほとんど、という方は、週に1度程度はドライブしてエンジンを温めましょう。
エンジンの調子が悪くなる前に、定期的なメンテナンスをするようにしましょう。