「仕事の送り迎えやスーパーへの買い物など、毎日数キロしか車を走らせていない……」
そんな心当たりのある方は多いのではないでしょうか。
実は、こうした短距離走行の繰り返し、いわゆる「チョイ乗り」は、長距離を走るよりもエンジンやパーツに大きな負担をかける「過酷な使用状況(シビアコンディション)」にあたります。
「あまり走っていないから車は傷んでいないはず」という思い込みが、実は愛車の寿命を縮めているかもしれません。
本記事では、チョイ乗りが車に与える悪影響から、今日からできる具体的な対策までを分かりやすく解説します。大切な愛車と長く付き合うための知恵を、ぜひ持ち帰ってください。
記事のポイント
チョイ乗りは車にダメージを与える「過酷な走行」
目安は「8km以内・15分未満」の走行が繰り返される状態
月2〜3回、30分以上の連続走行でエンジンをデトックスする
オイル交換は「距離」ではなく「半年ごと」の期間で早めに行う
バッテリーは充電効率の良い「高性能タイプ」を選んで対策
目 次
車のチョイ乗り対策で愛車を守る

「チョイ乗り」が車に良くないと言われる最大の理由は、エンジンやオイルが温まりきらないことにあります。しかし、生活スタイルを変えるのは難しいもの。対策の基本は、「月に数回のデトックス走行」と「早めの消耗品交換」の2点です。
チョイ乗りメインの車は、見た目が綺麗でもオイルの性能が低下していることが多いため、「距離」ではなく「期間(半年ごとなど)」で管理するのが、愛車を長持ちさせる最強の対策となります。
チョイ乗りって車に悪いの?
チョイ乗りが車にとってかなりの負担になる理由は、エンジンが「本来の性能を発揮できる温度(適温)」に上がる前に、目的地に着いてエンジンを切ってしまうからです。
エンジン内部では、ガソリンが燃焼する際に必ず「水分」が発生します。しっかり走り込めば、エンジンの熱でその水分は蒸発しますが、チョイ乗りばかりだと水分が蒸発せずにオイルの中に混ざり、オイルを白く濁らせたり性能を劣化させたりします。これが進むとエンジン内部にヘドロのような「スラッジ」が溜まり、エンジン不具合の原因になります。
また、バッテリーにとっても過酷です。エンジンをかけるときには膨大な電力を使いますが、走行距離が短いとその分を充電しきれません。常に「出し入れのバランスが赤字」の状態が続くため、バッテリーの寿命が極端に短くなってしまいます。人間で例えるなら、「寝起きで全力疾走して、体が温まる前にまたすぐ寝る」のを繰り返しているようなもの。愛車を労わるなら、たまには30分以上の連続走行で「デトックス」させてあげることが大切です。
車のチョイ乗りとは何キロ以内のこと?

一般的に「チョイ乗り」と言われるのは、走行距離にして8km以内、時間にして10分〜15分程度の走行を指します。
自動車メーカーの取扱説明書にある「シビアコンディション(厳しい使用条件)」の項目を見ると、「短距離走行の繰り返し(1回あたり8km以下)」という基準が示されていることが多いです。これは、エンジンオイルの温度がしっかり上がるまでに必要な距離が、だいたい8kmから10km程度だからです。
冬場や寒い地域であれば、さらに条件は厳しくなります。水温計の針がようやく動き出したかな?というタイミングでエンジンを切っているなら、それは間違いなくチョイ乗りです。
また、スーパーへの買い物や駅までの送り迎えなど、信号待ちが多くて平均速度が上がらない環境だと、距離が5km程度でも車へのダメージは蓄積されやすくなります。もしご自身のカーライフがこの範囲に収まっているなら、オイル交換の頻度を通常の半分(3,000km〜5,000km、または半年ごと)に早めるのがおすすめです。
車のチョイ乗りでも暖気した方がいい?

「チョイ乗りだからこそ、せめて暖機運転(アイドリング)をしてから出発すべきでは?」と考える方も多いですが、現代の車であれば、何十分もアイドリングをする必要はありません。
今の車は燃料噴射が電子制御されているので、昔の車のようにエンジンを温めないと止まってしまうことはありません。むしろ、停車したままのアイドリングではエンジンに負荷がかからないため、温度が上がるのに非常に時間がかかります。さらに、アイドリング中は完全燃焼しにくく、燃えカス(カーボン)が溜まりやすいというデメリットもあります。
おすすめの「現代版・暖機」は、エンジンをかけてから数十秒(ナビを設定したする時間)待って、ゆっくりと走り出すことです。走り出すことでエンジンだけでなく、トランスミッションやタイヤ、ベアリングといった駆動系全体をバランスよく温めることができます。
エンジンが高温になるまでは急加速を避け、優しくドライブするのが、チョイ乗りにおける最高のケアと言えるでしょう。
ディーゼルのチョイ乗り対策はどうすればいい?

ディーゼル車の場合、ガソリン車以上にチョイ乗りには注意が必要です。最近のディーゼル車には「DPF」という、排ガス中のススを除去するフィルターがついています。
このススは、ある程度走行して排ガスの温度が上がると自動的に燃焼・クリーニングされる仕組みなのですが、チョイ乗りばかりだと温度が上がらず、ススがフィルターにどんどん溜まってしまいます。これが限界を超えると、警告灯が点灯します。
対策としては、「週に一度は、時速60km以上で20分〜30分程度、止まらずに走り続けること」です。高速道路や流れの良いバイパスを走ることで、排ガス温度を上げ、溜まったススを一気に燃やし切ることができます。
また、ディーゼル専用の燃料添加剤を使用して、ススの発生を抑えるのも効果的です。もし「最近、DPF再生の頻度が増えたな」と感じたら、それは車からの「もっと走らせてくれ!」というサインかもしれません。
車のチョイ乗り対策で愛車を守る│ハイブリッドやバッテリーの話

ハイブリッド車やアイドリングストップ車は燃費性能に優れていますが、チョイ乗り環境下ではバッテリーに大きな負荷がかかります。エンジン始動と停止を繰り返すことで、電気の「持ち出し」が「充電」を上回ってしまうからです。
対策としては、まず「バッテリー選び」に妥協しないこと。チョイ乗りでも素早く電気を蓄えられる、充電受入性の高い高品質なバッテリーを選ぶことで、突然のトラブルを防げます。
チョイ乗りに適した車は?

「近所の買い物や送り迎えがメイン」というライフスタイルなら、電気自動車(EV)が圧倒的に最強の選択肢になります。
ガソリン車やディーゼル車にとっての最大の敵は「熱の問題」でしたが、EVにはエンジンそのものがありません。エンジンオイルを温める必要もなければ、排ガスの汚れを気にする必要もありません。スイッチを入れた瞬間から100%の力を発揮でき、数キロ走って止めるという動作を繰り返しても、機械的な劣化はほとんどありません。
もし「そこまで大きな買い物は…」ということであれば、ガソリンエンジンの中でも構造がシンプルで、部品代が安い「NAエンジン(ターボなし)の軽自動車」も現実的な選択です。ターボ車は熱管理がよりシビアになるため、チョイ乗りメインならNAの方がトラブルのリスクを抑えられます。
いずれにせよ、チョイ乗りメインの環境では、多機能で複雑な車よりも、その環境に特化したシンプルな動力源を持つ車の方が、結果として維持費も安く済みます。
車のチョイ乗りはハイブリッドがいい?
実は、ハイブリッド車(HEV)はチョイ乗りがそれほど得意ではありません。意外に思われるかもしれませんが、これには理由があります。
ハイブリッド車は、エンジンとモーターを効率よく使い分けますが、エンジンがかかっている間は「燃焼」が起きています。チョイ乗りだと、エンジンが温まる前にモーター走行に切り替わり、また冷えたらエンジンがかかる、という動作を繰り返すことになります。すると、ガソリン車と同じようにエンジンオイル内に水分が溜まりやすく、「オイルの乳化」というトラブルが起きやすいのです。
また、燃費の面でも不利になります。ハイブリッド車は始動直後、暖房を効かせたり触媒を温めたりするために積極的にエンジンを回します。短い距離だと、燃費が良いはずの「モーター走行」に入る前に目的地に着いてしまうため、期待したほど燃費が伸びないどころか、普通のガソリン車より燃費が悪くなることすらあります。ハイブリッドの恩恵をフルに受けるなら、ある程度の距離を走る環境が理想的です。
マイルドハイブリッドはチョイ乗り大丈夫?
最近の軽自動車やコンパクトカーに多い「マイルドハイブリッド」は、チョイ乗り環境においても比較的扱いやすいシステムです。
これはトヨタのプリウスのような「本格的なハイブリッド」とは違い、小さなモーターが発進時などを軽く手助けする程度の仕組みです。システムがシンプルなので、車重が軽く、エンジンへの依存度が高いのが特徴です。そのため、エンジンの温度管理については普通のガソリン車とほぼ同じ感覚でメンテナンスを考えればOKです。
ただし、「アイドリングストップ」が頻繁に作動する点には、注意が必要です。冬場のチョイ乗りで、エンジンが温まっていないのにアイドリングストップを繰り返すと、バッテリーへの負荷が非常に高くなります。裏技としては、あまりに距離が短い時はあえてアイドリングストップ機能をオフにして、エンジンをしっかり回してあげるのも一つの手です。仕組みを理解して付き合えば、マイルドハイブリッドは街乗りにおける非常に賢い相棒になってくれますよ。
ちょい乗りで使うバッテリーのおすすめは?

チョイ乗りが多い車に搭載するなら、「充電受入性(じゅうでんうけいれせい)」が高い、高性能なバッテリーを選ぶのが正解です。
チョイ乗りは、始動時の放電に対して、走行中の充電が追いつかない「万年充電不足」の状態です。安価な標準バッテリーだと、十分に充電されないまま劣化が進んでしまいます。そこでおすすめなのが、アイドリングストップ車用(Q-85やS-95など)や、メンテナンスフリー(MF)のハイグレードモデルです。これらは、短い走行時間でも素早く電気を蓄えられるように設計されています。
メーカーで言えば、国内シェアの高いパナソニックの「カオス(caos)」や、GSユアサの「エコ.アール(ECO.R)」シリーズなどが鉄板です。これらは充電回復能力が高く、チョイ乗り特有の過酷な環境でも粘り強く性能を維持してくれます。
少し値段は張りますが、出先で突然エンジンがかからなくなるトラブルを未然に防ぎ、結果として交換サイクルを伸ばせることを考えれば、先行投資としては非常にコスパが良いですよ。
車のチョイ乗り対策で愛車を守る│総括
便利だからこそついついやってしまう「チョイ乗り」ですが、実は車の内部では、私たちが想像する以上の負荷がかかっています。
エンジンオイルの劣化やバッテリー上がり、ディーゼル車のスス詰まりなど、放っておくとエンジン不調につながりかねません。
しかし、適切な知識を持ってメンテナンスを行えば、そのダメージは最小限に抑えることができます。
週に一度は少し遠出をしてエンジンをしっかり回してあげること、そして何より早めのオイル交換を心がけることが、最も効果的なチョイ乗り対策となります。
「最近、近所しか走っていないな」と感じたら、ぜひこの記事を思い出して、愛車を労わってあげてください。