自動車を使用する中で、エンジンがなかなか始動しないというトラブルに直面することがあります。
そのような時に、意外な救世主となるのがパーツクリーナーです。
パーツクリーナーは、自動車やバイクの整備において欠かせないツールの1つです。
特に、エンジン内部の汚れやカーボンを除去する際にその効果が期待されますが、長期保管された車や、おもにキャブ車ではエンジンの始動を助けることができます。
今回の記事では、なぜパーツクリーナーでエンジンの始動が可能なのか、そのメカニズムについて詳しく解説していきます。
記事のポイント
パーツクリーナーには、ヘキサン、エタノール、ブタンなどが含まれている
パーツクリーナーは、揮発性の高い「代替燃料」として機能する
パーツクリーナーは潤滑性を持たないので、常用すると機関を痛める
エンジンが始動しないときは、燃料系、点火系統の原因を探る
目 次
パーツクリーナーでエンジン始動が可能なの?

パーツクリーナーがエンジンの始動にどのように関与するかを説明し、パーツクリーナーを効果的に活用するためのヒントを提供します。
パーツクリーナーでエンジン始動するのはなぜ?
エンジンが始動するためには、「良い混合気」「適切な圧縮」「確実な点火」という3つの要素が必要です。
通常、ガソリンが燃料として用いられますが、パーツクリーナーも一時的にこの役割を代用できる場合があります。
それは、パーツクリーナーの成分に秘密があります。
パーツクリーナーは、主に可燃性の溶剤と推進剤で構成されています。
この可燃性溶剤が、エンジンの燃焼室で爆発することで、ピストンを動かす力を生み出します。
いわば、パーツクリーナーがガソリンの代わりになる、非常に揮発性の高い「代替燃料」として機能するのです。
もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。
- 可燃性溶剤
パーツクリーナーには、ヘキサン、エタノールなど、様々な可燃性溶剤が含まれています。
これらの溶剤は、非常に揮発性が高く、空気と混ざりやすい性質を持っています。
つまり、エンジン内部に噴射されると、素早く気化して燃焼しやすい混合気を形成します。 - 推進剤
パーツクリーナーはスプレー缶に入っているため、噴射するための推進剤(ブタン)が含まれています。
この推進剤も可燃性である場合があり、燃焼を促進する役割を果たします。
3.エンジンの仕組み
エンジンは、吸気、圧縮、爆発、排気の4つの行程を繰り返すことで動力を生み出します。
パーツクリーナーを吸気口に噴射すると、吸気行程でシリンダー内部に取り込まれ、圧縮行程で圧縮されます。
そして、点火プラグによって点火されると爆発し、ピストンを押し下げます。
この一連の動作が、パーツクリーナーによって一時的に可能になるのです。
■注意点
しかし、パーツクリーナーでのエンジン始動は緊急時を除き、推奨しません。
パーツクリーナーは、ガソリンのようにエンジン用に設計された燃料ではないため、以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。
・エンジン内部の潤滑不足
パーツクリーナーは潤滑性を持ちません。
そのため、長期間の使用は、ピストンリングやシリンダー壁などの摩耗を促進し、エンジンの寿命を著しく縮めます。
・燃料ポンプやインジェクターの損傷
パーツクリーナーは、燃料システムのゴム部品やプラスチック部品を劣化させる可能性があります。
・排気ガスによる環境汚染
パーツクリーナーの燃焼によって生成される排気ガスは、通常のガソリン車よりも有害物質が多く含まれる可能性があります。
あくまで、緊急時の一時的な対処法としてのみ考え、常用は避けるべきです。
真の原因を究明し、適切な修理を行うことが重要です。

エンジンかからないけど初爆ありのときの原因は?
「エンジンがかからないが、初爆(最初の爆発)がある」という状況は、燃焼プロセスの一部が始動できていることを示しています。
しかし、エンジン全体が持続的に動作するための条件が満たされていないことが考えられます。
以下にその原因を詳しく探ってみましょう。
- 燃料供給の問題
燃料ポンプの故障や燃料フィルターの詰まりによって、燃料が効率的にエンジンに供給されないことが原因である可能性があります。
初爆がある場合、少量の燃料がシリンダーに届いていることが示唆されますが、それではエンジンを持続して回すには不十分です。 - 点火系統の不具合
点火プラグの劣化やイグニッションコイルの故障により、火花が十分に生成されない場合があります。
このような状態では、最初の爆発は起こるものの、その後の燃焼サイクルが維持できません。 - 空気供給の問題
エアフィルターの詰まりやスロットルボディの汚れが原因で、適切な空気流入が阻害されていることが考えられます。
空気が不足すると、燃焼に必要な混合気が適切に形成されずに始動が妨げられます。 - センサーの故障
エンジン制御ユニット (ECU) に信号を送る各種センサー(例えば、クランクシャフトポジションセンサーやカムシャフトポジションセンサー)の故障も考えられます。
これらセンサーが誤ったデータを提供すると、ECUが適切な点火タイミングや燃料供給を制御できなくなります。 - バッテリーやスターターの問題
バッテリーの充電が不十分だったり、スターターモーターが劣化していると、エンジンが完全に始動するのに必要な初期回転が得られません。
各コンポーネントをしっかりと点検し、必要に応じて部品を交換することで、信頼性のある車の性能を取り戻すことができます。
問題が解決しない限り、無理にエンジンを始動させようとするのは避け、安全を第一に考慮することが重要です。
セルは回っているのにエンジンが始動しないのはなぜ?
セルは回っているのにエンジンが全く反応しない場合、以下の点が疑われます。
- 燃料系統の問題
・燃料不足
ガソリンタンクが空っぽ、もしくは燃料ポンプの故障で燃料がエンジンまで届いていない可能性があります。
まずは燃料計を確認し、必要であればガソリンを補充してみましょう。燃料ポンプの作動音を確認するのも有効です。
・燃料フィルターの詰まり
燃料フィルターが目詰まりを起こしていると、十分な燃料がエンジンに供給されません。
フィルターの交換時期を確認し、汚れている場合は交換が必要です。
・インジェクターの不良
インジェクターが正常に作動していないと、燃料が霧状に噴射されず、適切な混合気が作れません。
インジェクタークリーナーを使用するか、必要に応じて交換を検討します。
・燃料圧力の低下
燃料ポンプの不調や燃料レギュレーターの故障により、燃料圧力が規定値より低くなっている可能性があります。
専用のゲージで燃料圧力を測定し、原因を特定します。
2. 点火系統の問題
・スパークプラグの劣化/不良
スパークプラグが劣化していると、火花が弱くなったり、飛ばなくなったりします。
スパークプラグの状態を確認し、摩耗や汚れがひどい場合は交換しましょう。
・クランク角センサーの不良
クランク角センサーは、エンジンの回転位置を検知し、点火時期を制御する重要なセンサーです
これが故障すると、点火時期がずれてエンジンがかかりにくくなります。
3. その他
・圧縮不足
ピストンリングやバルブの摩耗、シリンダーヘッドガスケットの損傷などにより、圧縮不足が起こると、エンジンがかかりにくくなります。
圧縮圧力を測定し、規定値を下回っている場合は、原因を特定し修理が必要です。
・ECU(エンジンコントロールユニット)の不調
ECUが正常に作動していないと、燃料噴射や点火時期などが適切に制御されず、エンジンがかかりにくくなります。
故障診断機を使用してECUのエラーコードを読み取り、原因を特定します。
パーツクリーナーでエンジン始動が可能なの?│基本的な事項

エンジンがかかりにくい状況で、パーツクリーナーは助けになります。
しかし、根本的なエンジン始動の問題を解決するためには、燃料供給系統や点火系統、空気供給、圧縮などを総合的に点検し、適切な修理を行うことが重要です。
エンジン始動に必要なものは何ですか?
エンジンが始動し、そして走り続けるためには、いくつかの重要な要素が組み合わって機能する必要があります。
大きく分けて、次の3つの要素が不可欠です。
- 良好な混合気
エンジン内部で爆発を起こすためには、適切な割合で空気と燃料が混合された混合気が必要です。
・空気
空気は、吸気系を通してエンジン内部に取り込まれます。
エアクリーナーは異物の混入を防ぎ、エンジンにきれいな空気を供給する役割を果たします。
吸気系のどこかで詰まりが発生すると、十分な空気が供給されず、エンジンが始動しにくくなります。
・燃料
燃料は、燃料ポンプによってタンクからエンジンへと送られます。
燃料フィルターは、燃料に含まれる不純物を取り除き、インジェクターは燃料を霧状にしてシリンダー内に噴射します。
燃料圧力が適切でなければ、最適な混合気が作れません。
ガソリン車の場合、ガソリンが燃料となりますが、ディーゼル車の場合は軽油を用います。
2. 適切な圧縮
ピストンが上昇する際に混合気を圧縮することで、爆発力を高めます。
この圧縮が適切でないと、エンジンは正常に作動しません。
・ピストンリング
ピストンとシリンダー壁の間の隙間を塞ぎ、圧縮漏れを防ぎます。
ピストンリングが摩耗したり破損すると、圧縮不足になり、出力低下や始動不良につながります。
・シリンダー
エンジンの主要部品であり、ピストンが上下運動する空間を提供します。
シリンダーに傷や摩耗があると、圧縮漏れが発生します。
・バルブ
吸気バルブと排気バルブは、適切なタイミングで開閉し、空気と排気ガスの流れを制御します。
バルブの密閉性が損なわれると、圧縮漏れが発生します。
・シリンダーヘッドガスケット
シリンダーヘッドとシリンダーブロックの間をシールし、冷却水やオイルの漏れを防ぎます。
ガスケットが破損すると、圧縮漏れや冷却水漏れ、オイル漏れなどが発生します。
3. 確実な点火
圧縮された混合気に点火し、爆発させる必要があります。
・スパークプラグ(ガソリンエンジン)
高電圧の火花を発生させ、混合気に点火します。
スパークプラグが劣化していると、火花が弱くなったり、飛ばなくなったりします。
・イグニッションコイル
バッテリーの電圧を昇圧し、スパークプラグに必要な高電圧を発生させます。
・クランク角センサー
エンジンのクランクシャフトの回転位置を検出し、ECUに情報を送ります。
ECUはこの情報に基づいて点火時期を制御します。
4. その他
上記の3要素以外にも、エンジンを始動し、そして動かし続けるためには、以下のような要素も必要です。
・バッテリー
スターターモーターを駆動するための電力源です。
・スターターモーター
エンジンを始動させるためのモーターです。
・ECU(エンジンコントロールユニット)
エンジンの状態を監視し、燃料噴射量や点火時期などを制御するコンピューターです。
これらの要素が適切に連携することで、エンジンはスムーズに始動し、そして走り続けることができます。
もしエンジンが始動しない場合は、これらの要素のどこかに問題が発生している可能性があります。
初爆とは何ですか?
エンジンをかけようとした時に「ボッ」とか「ブスン」といった短い爆発音が聞こえることを「初爆」と言います。
これは、エンジン内部で少なくとも一度は燃焼が起こったことを示す重要なサインです。
いわば、エンジンがかかりそうでかからない状態での、エンジンの咳のようなものです。
初爆が発生するメカニズムを簡単に説明すると、以下のようになります。
- クランキング
キーを回すと、スターターモーターがエンジンを回転させ始めます。 - 混合気の形成
エンジンは回転するにつれて、吸気バルブから空気を取り込み、燃料噴射装置から燃料を噴射し、混合気を生成します。 - 点火
点火プラグから火花が飛び、混合気に点火します。 - 初爆
この点火によって混合気が爆発し、ピストンが押し下げられます。
これが初爆音として聞こえます。
しかし、初爆の後にエンジンが継続して回転しないのは、どこかの要素が不足しているためです。
初爆があるということは、点火系と燃料系のどちらにもある程度の機能があることを示唆しています。
しかし、そのどちらか、あるいは両方に問題があり、安定した燃焼を持続できない状態です。
初爆の音や頻度、エンジンの状態などをよく観察することで、原因を特定するためのヒントが得られる場合もあります。
総括│パーツクリーナーでエンジン始動が可能なの?
パーツクリーナーでエンジンが始動する理由は、その成分に含まれる可燃性溶剤が、緊急時には燃料の代用となるからです。
しかし、これはあくまで一時的な対処法であり、常用は避けるべきです。
パーツクリーナーはエンジンオイルを洗い流してしまうため、潤滑不足を引き起こし、エンジンに深刻なダメージを与えてしまいます。
また、燃料系統の部品を劣化させる可能性もあります。
エンジンがかからない真の原因を究明し、適切な修理を行うことが重要です。
初爆がある場合は、燃料系統、点火系統、圧縮漏れなどを疑い、それぞれの原因に合わせた適切な処置が必要です。
パーツクリーナーによるエンジン始動は、緊急時の一時的な手段としてのみ考え、エンジンが始動しない根本原因を突き止め、メンテナンスを行いましょう。