軽自動車に乗る方のなかには、「軽自動車ならタイヤバランスは不要なのか?」と疑問に思われる方も多いようです。
確かに、車重が軽くタイヤサイズも小さい軽自動車は、振動やブレといった不具合が大型車ほど目立たない印象があります。
しかし、本当にタイヤバランスを省略しても大丈夫なのでしょうか?
そもそもタイヤバランスが崩れると、どんなトラブルが起きるのか。
この記事では、なぜタイヤバランスが軽自動車にとっても欠かせないメンテナンス項目なのかを詳しく解説します。
記事のポイント
タイヤとホイール、双方のわずかな重量の偏りを均一にする作業
軽自動車でもタイヤバランス調整は必須、不要という説は誤解
放置は振動や偏摩耗、足回り故障の原因となることも
タイヤをホイールから外す交換作業では、毎回調整が必要
専用機械と技術が必須のため、個人でのDIY作業は困難
軽自動車はタイヤバランス不要なの?

軽自動車は、車体やタイヤが軽くサイズも小さいため、バランス未調整の影響は大型車より小さい場合もあります。
しかし。バランスが崩れていると、一定速度域でハンドルのブレや車体の振動が起こり、運転の快適性や安全性に影響を与えることになります。
タイヤバランスはやらなくても大丈夫?
軽自動車のオーナーの中には、タイヤバランスを無視しても良いと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際にはタイヤバランスは非常に重要です。
その理由を具体的に説明します。
高速走行だけじゃない!ハンドルのブレと不快な振動
タイヤバランスが狂っていると、まず体感として現れるのが、走行中のハンドルのブレや車体の振動です。
「ブルブルブル…」という微細な振動が、特定の速度(時速60km~80kmあたりから感じ始めることが多いです)で発生します。
「高速道路はあまり走らないから関係ない」と思われるかもしれませんが、バイパスや少し速度の出る幹線道路でもこの現象は十分に起こり得ます。
このブレや振動は、単に不快なだけではありません。
- 安全性の低下
無意識にハンドルを強く握ることで、長距離運転での疲労が蓄積します。
また、とっさの危険回避でハンドル操作が遅れる原因にもなりかねません。 - 乗り心地の悪化
運転している本人だけでなく、助手席や後部座席に乗っているご家族やご友人も不快な思いをします。
せっかくのドライブが台無しになってしまいますよね。
タイヤの寿命が縮む偏摩耗という落とし穴
「せっかく新品に交換したタイヤが、なんだか一部分だけ妙に減りが早い…」
これは、タイヤバランスの狂いが引き起こす典型的な症状である偏摩耗(へんまもう)です。
バランスが取れていないタイヤは、回転するたびに特定の部分が強く路面に叩きつけられるような状態になります。
その結果、タイヤが均一に減らず、一部分だけが異常に摩耗してしまうのです。
これでは、本来であれば数万km走れるはずのタイヤが、その半分以下の走行距離で交換時期を迎えてしまうことも。
数千円のバランス調整料金を惜しんだために、数万円のタイヤを早期に買い替えることになっては、本末転倒ですよね。
無視できない足回り部品へのダメージ
タイヤのアンバランスによる振動は、タイヤやハンドルだけに影響するのではありません。
その振動は、サスペンションやアーム類、ハブベアリングといった、車の走行を支える非常に重要な足回りの部品に、絶えずダメージを与え続けます。
最初は小さなガタつきでも、放置すればハブベアリングの交換など、足回りの修理に費用がかかるケースもあります。
タイヤ交換したらバランス調整は毎回必要ですか?

タイヤ交換を行った際は、毎回バランス調整を行うことをお勧めします。
一部の方は、バランス調整が不要と考えるかもしれませんが、それは誤解です。
タイヤとホイールはそれぞれに偏りがある
タイヤのバランス調整とは、単にタイヤだけのバランスを取っているのではありません。
タイヤとホイール、この2つを組み合わせた状態で、初めて完璧な重量バランスを作り出す作業です。
新品のタイヤも、見た目は綺麗な真円ですが、実はゴムの密度などの関係で、製造段階からミクロの単位で必ず重量の偏り(アンバランス)があります。
同じように、ホイールにも製造上のわずかな偏りや、空気を入れるエアバルブの重さがあります。
つまり、タイヤ交換とは、この「わずかに偏りのあるタイヤ」と「わずかに偏りのあるホイール」の新しいペアリングを作る作業なのです。
前回、完璧にバランスを取ったとしても、それはあくまで「古いタイヤとホイールの組み合わせ」に対して行った調整です。
タイヤをホイールから剥がした瞬間、その完璧なバランスはリセットされてしまいます。
そのため、タイヤを組み替えるたびに、専用のホイールバランサーという機械にセットし、どこが重くてどこが軽いのかを精密に測定します。
そして、その測定結果をもとに、バランスウェイトと呼ばれる小さな鉛や鉄のおもりをホイールに打ち込んだり貼り付けたりして、回転時の重量を均一にするのです。
タイヤローテーションの場合は?
タイヤをホイールに組んだまま、前輪と後輪を入れ替えるタイヤローテーションの場合は、話が別です。
この作業ではタイヤとホイールの組み合わせは変わりませんので、原則として毎回バランス調整を行う必要はありません。
ただし、走行するうちにタイヤが偏摩耗したり、縁石にぶつけるなどしてバランスウェイトが剥がれてしまったりすることもあります。
そのため、ローテーションの際にも、念のためバランスが崩れていないかチェックし、異常があれば再調整をおすすめします。
タイヤバランス調整にかかる費用は?
タイヤバランス調整の費用は、大きく分けて2つのパターンがあります。
タイヤ交換とセットで行う場合
これが最も一般的なケースです。
タイヤを新しく購入し、整備工場やタイヤ専門店で交換作業を依頼する際には、作業工賃の中にバランス調整料金が含まれていることがほとんどです。
一般的な料金の内訳は、以下のようになっています。
- タイヤ組み替え工賃
古いタイヤをホイールから外し、新しいタイヤをはめる作業 - ホイールバランス調整料
タイヤとホイールを組んだ状態で、バランスを調整する作業 - 廃タイヤ処分料
交換した古いタイヤを処分するための費用 - ゴムバルブ交換料
空気の注入口であるゴム部品の交換費用(タイヤ交換時の同時交換が推奨です)
これらを合計したタイヤ交換工賃として、おおよその目安ですが、軽自動車(12~15インチ)のタイヤ4本交換の場合、バランス調整を含めた総額で、おおよそ6,000円~10,000円程度になります。
(※料金はタイヤのサイズや、お車が特殊なホイールを履いているかなどによって多少前後します)
バランス調整だけを依頼する場合
「最近、なんだかハンドルがブレるから、バランスだけ見てもらいたい」
といったケースですね。
この場合は、タイヤとホイールを車体から外し、バランサーで測定して再調整する作業になります。
料金の目安としては、タイヤ1本あたり1,000円~2,000円程度が一般的です。
4本すべて行っても、1万円以内で収まることがほとんどです。
軽自動車はタイヤバランス不要なの?│DIY、軽トラについて

タイヤのホイールバランス調整は、専門機器や技術が必要になるので、DIYは難しいです。
また、トラックについても、バランス調整は重要な整備です。
そもそもホイールバランス調整が求められる理由は?

ホイールバランス調整が必要な理由は、以下のポイントに集約されます。
タイヤ・ホイールの微妙な重量のバラツキ
タイヤだけでなくホイールにも、微細な重量のバラツキがあります。
特に、タイヤは生産段階で完全な真円ではないため、軽点(軽い部分)が示されています。
また、ホイールもエアバルブ周辺やデザインによって重量が歪むことがあります。
こうした重量のバラツキが、ホイールとタイヤを組み合わせるとさらに顕著になり、バランス調整が必要になります。
タイヤ・ホイールの経年劣化
タイヤは走行を重ねるごとに摩耗し、重量のバランスも次第に変わります。
さらに、ホイールは道路の悪路や衝撃による変形で、重量の偏りが進むことがあります。
これにより、走行中に振動やハンドルのブレが発生しやすくなります。
特に高速走行時や長距離走行時には、乗り心地や安全性が損なわれる可能性があります。
安全性と快適性の向上
ホイールバランス調整は、安全かつ快適な走行を実現するために不可欠です。
バランスが取れていないと、ハンドルのブレや車体の振動が発生し、運転者に不快感を与えます。
また、タイヤの偏摩耗が進むと、グリップ力が低下し、安全運転に支障をきたします。
さらに、燃費の悪化やサスペンション部品への負担増加も懸念されるため、定期的なバランス調整が推奨されます。
タイヤバランスは自分で可能?

最近はDIYで車のメンテナンスをされる方も増え、そうお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現実的には困難であり、おすすめできません。
その理由は、大きく2つあります。
ホイールバランサーという高価な専用機材が必須
まず、最大のハードルが機材です。
タイヤのホイールバランス調整は、人間の感覚や目視でできる作業ではありません。
タイヤとホイールをセットした状態で高速回転させ、1グラム単位の重量の偏りを測定できる「ホイールバランサー」という専用の機械が必要になります。
この機械は、安いものでも数十万円、高精度なものになると百万円以上もする、まさにプロ専用の設備です。
また、測定結果に基づいて取り付けるバランスウェイトも、ホイールの種類(スチールかアルミか)や形状によって多種多様なものが必要になります。
これらの設備を個人で揃えるのは、費用対効果を考えても全く現実的ではありません。
タイヤの組み替えには、専門技術と別の専用工具が必要
そもそも、バランス調整が必要になるのは、タイヤをホイールに組み替えた時です。
このタイヤの組み替え(脱着)作業自体が、DIYで行うには非常にハードルが高いです。
タイヤの「ビード」と呼ばれるフチの部分は、ホイールにしっかりとはまり込むように、非常に硬く作られています。
これを安全かつ確実に、タイヤやホイールを傷つけることなく脱着するには、「タイヤチェンジャー」という、これもまた別の専用機械が必要不可欠です。
結論として、タイヤのホイールバランス調整は、専用の設備と専門の知識・技術の両方が揃って、初めて安全かつ確実に行えるプロの作業領域です。
トラックにホイールバランスは必要ない?

軽トラにおいてもホイールバランスは重要で、必ず調整すべきものです。
トラックは重い荷物を積んで走るため、ホイールバランスが乱れると直進安定性が低下し、ハンドル操作に支障をきたします。
特に高速道路では車体の揺れが激しくなり、安全運転に影響が出ます。
また、バランス不良が続くとタイヤの偏摩耗が進み、タイヤ寿命が短くなり走行時の振動や騒音も増加します。
さらに、ホイールバランスが崩れていると、サスペンションやステアリングの部品、ベアリングなど足回りの金属部品に過度な負担がかかり、早期故障やネジの緩みの原因にもなります。
トラックの場合は特にパーツの摩耗や故障が走行中のリスクを高めるため、経済面と安全面の両方からバランス調整は欠かせません。
軽トラは、車重や荷物の重さにより路面からの衝撃や振動も大きく伝わります。
そのため、走行中に自然とホイールバランスは乱れやすく、定期的な点検と調整が必要です。
以上の理由から、軽トラにホイールバランスは不要という考えは誤りであり、安全かつ経済的な走行のために適切なバランス調整は必須の作業です。
トラック用タイヤ・ホイールの特性を踏まえ、定期的に専門業者でバランスチェック・調整を行うことが推奨されます。
総括│軽自動車はタイヤバランス不要なの?
軽自動車でもタイヤバランスは重要なメンテナンス項目です。
バランスが取れていないと、振動やハンドルのぶれを引き起こし、乗り心地や車両の安全性に影響します。
また、タイヤだけでなく、サスペンションやその他の部品にも余計な負荷をかけることになります。
経済的且つ安全なドライブを実現するためには、定期的なタイヤバランス調整が欠かせません。
プロの技術者による正確な調整を受けることで、快適で安心なカーライフがおくれます。