車のエンジンにとって、冷却システムは人間の心臓における血管のようなもの。
その血液ともいえる重要な役割を担っているのが、クーラントです。
しかし、このクーラントも時間の経過とともに劣化し、冷却性能が低下していきます。
劣化を放置すると、オーバーヒートや部品の腐食など、深刻なトラブルに繋がることも。
そこで、今回は「クーラント液の劣化はどこで判断するの?」というテーマで、ご自身で劣化のサインを見つける方法、そして適切な交換時期について詳しく解説していきます。
早期発見、早期対処で、愛車の寿命を延ばし、安全で快適なカーライフを送りましょう。
記事のポイント
クーラントは時間の経過とともに劣化し、冷却性能が低下していく
色の変化や甘いような異臭、リザーバータンクの液減少などが症状
冷却性能の低下や、ラジエーター回りの金属部品が腐食することも
内部の腐食でウォーターポンプが故障することもある
2年または4万kmごとの交換、使用条件によってはもっと早めの交換を
目 次
クーラントの劣化はどこで判断するの?

クーラント液の劣化を判断することは、車両の健康と安全を確保するために重要です。
クーラントの種類や使用環境によっても寿命は異なりますが、劣化の兆候には、色の変化や濁り、異臭などがあります。
クーラントが劣化している症状は?
クーラントの劣化は、放っておくとオーバーヒートやエンジン破損などの深刻なトラブルに繋がります。
早めの交換が肝心ですので、以下の症状に当てはまるものがないか、定期的にチェックしましょう。
- 色の変化
新品のクーラントは、一般的に緑色や赤色、青色などの鮮やかな色をしています。
しかし、劣化が進むと錆や汚れが混ざり、茶色や濁った色に変色します。
特に、赤褐色や緑褐色に変色している場合は、劣化が進んでいる可能性が高いです。
冷却水のリザーバータンクを確認するだけで判断できるので、手軽にチェックできます。 - 異臭
クーラントが劣化すると、甘酸っぱいような独特の臭いを発することがあります。
これは、クーラントに含まれる添加剤が分解されることで発生するものです。
ボンネットを開けた際に、このような臭いがする場合は、クーラントの劣化を疑いましょう。 - 冷却性能の低下
クーラントが劣化すると、本来の冷却性能が低下し、オーバーヒートを起こしやすくなります。
水温計の針がいつもより高い位置を示していたり、エンジンのパワーがダウンしたなと感じる場合は、オーバーヒートの危険性があります。
車を安全な場所に停止し、エンジンを冷まして点検を受けましょう。 - リザーバータンク内の量の減少
クーラントは、通常であれば密閉された冷却システム内を循環しており、量が減ることはありません。
しかし、ラジエーターやホースなどに漏れがあると、クーラントが外部に漏れて量が減ってしまいます。
リザーバータンクのクーラント量が「MIN」ラインを下回っている場合は、漏れがないか点検が必要です。
漏れがないのに量が減っている場合は、エンジン内部で冷却水が燃焼している可能性があり、早急に整備工場で点検してもらう必要があります。 - ラジエーターやホースの腐食
クーラントには、防錆効果がありますが、劣化するとその効果が薄れ、ラジエーターやホースなどの金属部品が腐食しやすくなります。
ラジエーターに錆や漏れが見られる場合は、クーラントの交換だけでなく、ラジエーターやホースの交換も必要になることがあります。
クーラント液は何年くらい持ちますか?
クーラント液の寿命は、使用状況や種類によって大きく異なります。
一般的な長寿命クーラント(LLC)の場合、未開封であれば2~3年程度は保管可能です。
しかし、一度車両に使用されると、劣化が始まります。
交換時期の目安としては、2年または4万kmごとが一般的です。
ただし、これはあくまで目安であり、厳しい環境で使用されている場合は、もっと早く交換が必要になることもあります。
例えば、
- ストップアンドゴーの多い市街地走行
エンジンが高温になりやすく、クーラントの劣化が早まります。 - 高温多湿な地域での使用
クーラントの成分が変質しやすくなります。 - 牽引など負荷の高い運転
エンジンへの負担が大きくなり、クーラントの劣化も促進されます。
といった場合は、車検毎、もしくは1年ごとの交換を検討すべきでしょう。
また、クーラントの種類によっても寿命が異なります。
- 従来のクーラント
2年または4万kmごとの交換が一般的です。 - スーパーLLC(スーパーロングライフクーラント)
車種によっては、5年または10万kmまで交換不要とされています。
しかし、過信せず定期的な点検は必要です。
クーラントが劣化する原因はなに?
クーラントは、ただの水ではなく、様々な添加剤が加えられた混合液です。
これらの添加剤が、冷却性能の向上や防錆効果などを発揮しています。
しかし、時間の経過や使用状況によってこれらの添加剤が消耗し、クーラントが劣化していきます。
主な原因は以下の通りです。
- 高温による劣化
エンジン内部は高温になるため、クーラントも高温にさらされます。
この高温環境が、添加剤の分解や劣化を促進します。
特に、渋滞時など冷却水が循環しにくい状況では、局所的に高温になりやすく、劣化が加速します。 - 酸化
クーラントは、空気中の酸素と触れることで酸化します。
酸化が進むと、クーラントの色が変化したり、スラッジ(沈殿物)が発生したりします。
スラッジは、冷却経路を詰まらせ、オーバーヒートの原因となることがあります。 - 水分蒸発
クーラントは、冷却システム内を循環する過程で、少しずつ水分が蒸発していきます。
水分が蒸発すると、クーラントの濃度が変化し、凍結温度が上昇したり、冷却性能が低下したりします。 - 異物混入
冷却システムに外部から異物、例えば埃や虫などが混入すると、クーラントの劣化を早める可能性があります。
また、異なる種類のクーラントを混ぜてしまうと、添加剤同士が反応してしまい、性能低下につながることもあります。 - 経年劣化
クーラントは、使用していなくても時間の経過とともに劣化します。
未開封の状態でも、数年で性能が低下するため、交換が必要になります。
クーラントの劣化はどこで判断するの?│種類、無交換のリスク

クーラントは、大きく分けて「従来型クーラント」と「LLC(ロングライフクーラント)」の2種類があります。
冷却水(クーラント)を交換しないと、エンジンに深刻なトラブルを引き起こすリスクが高まります。
クーラントの種類はどんなものがある?
クーラントは、大きく分けて「従来型クーラント」と「LLC(ロングライフクーラント)」の2種類があり、さらにLLCの中には種類があります。
それぞれの特徴を理解し、ご自身の車に合ったクーラントを選びましょう。
■従来型クーラント
- 主成分:エチレングリコール
- 交換目安:2年または4万kmごと
- 特徴:比較的安価ですが、交換頻度が高いため、長期的に見るとコストがかかる場合があります。また、防錆効果の持続期間が短いため、定期的な交換が必須です。
■LLC(ロングライフクーラント)
LLCは、長寿命化を実現するために様々な添加剤が配合されています。
大きく分けて以下の3つの種類があります。
- エチレングリコール系LLC
- 主成分:エチレングリコール
- 交換目安:2~4年または4万~8万kmごと (車種による)
- 特徴:従来型クーラントよりも長寿命で、防錆効果も優れています。
現在、最も普及しているタイプのクーラントです。
- プロピレングリコール系LLC
- 主成分:プロピレングリコール
- 交換目安:エチレングリコール系LLCと同等
- 特徴:エチレングリコール系に比べて毒性が低いため、環境への負荷が少ないとされています。
万が一、ペットや小さなお子様が誤飲してしまった場合のリスク軽減にも繋がります。
- スーパーLLC(スーパーロングライフクーラント)
- 主成分:エチレングリコールまたはプロピレングリコールをベースに特殊な添加剤を配合
- 交換目安:5年または10万kmごと (車種による)
- 特徴:LLCの中でも特に長寿命で、交換頻度を大幅に減らすことができます。
ただし、価格は高めです。
一部の輸入車や国産高級車に採用されているケースが多いです。
【クーラント選びの注意点】
- 車種に適合したクーラントを使用することが重要です。
取扱説明書で指定されているクーラントの種類を確認しましょう。 - 異なる種類のクーラントを混ぜて使用すると、性能が低下したり、トラブルの原因となる可能性があります。
補充する際は、同じ種類のクーラントを使用するか、全量交換するようにしましょう。 - 色でクーラントの種類を判断することはできません。
緑、赤、青など様々な色のクーラントがありますが、これはメーカーによる識別のための着色であり、性能とは直接関係ありません。
冷却水を交換しないとどうなる?
冷却水、つまりクーラントはエンジンの冷却という重要な役割を担っています。
これを交換しないと、様々なトラブルを引き起こし、最悪の場合、高額な修理費用が必要になることもあります。
具体的には、以下のようなリスクがあります。
- オーバーヒート
クーラントが劣化すると、冷却性能が低下し、エンジンがオーバーヒートしやすくなります。
オーバーヒートは、エンジン内部の部品を損傷させ、最悪の場合、エンジンが焼き付いてしまうこともあります。
修理には多額の費用がかかるため、早めの交換が重要です。 - ラジエーターの腐食
クーラントには、ラジエーターやウォーターポンプなどの金属部品を腐食から守る防錆剤が含まれています。
しかし、クーラントが劣化すると、この防錆効果が薄れ、腐食が発生しやすくなります。
腐食が進むと、冷却水が漏れたり、部品が破損したりする可能性があります。 - ウォーターポンプの故障
ウォーターポンプは、クーラントを循環させる重要な部品です。
劣化したクーラントを使用し続けると、ウォーターポンプの軸受が摩耗しやすくなり、故障の原因となります。
ウォーターポンプの交換も、比較的高額な修理費用が必要です。 - ヒーターの効きが悪くなる
クーラントは、エンジンの熱を利用して車内を暖めるヒーターにも使用されています。クーラントが劣化すると、熱伝導率が低下し、ヒーターの効きが悪くなることがあります。
特に冬場は、快適なドライブに支障をきたす可能性があります。 - 冷却経路の詰まり
劣化したクーラントは、スラッジ(沈殿物)を発生させることがあります。
このスラッジが冷却経路に詰まると、冷却水の循環が悪くなり、オーバーヒートなどのトラブルにつながる可能性があります。
総括│クーラントの劣化はどこで判断するの?
クーラント液の劣化は、主に色の変化や液量の減少、そして性能の低下によって判断します。
クーラント液はエンジンの冷却と防錆に重要な役割を果たし、劣化するとオーバーヒートや部品の腐食を引き起こすリスクが高まります。
劣化のサインとしては、クーラントの色が濁ったり黒ずんだりすること、リザーバータンクの液面が「MIN」ラインを下回ること、また冷却性能の低下が挙げられます。
クーラント液は使用状況にもよりますが、通常は2~3年ごとに交換が推奨され、長期間交換しないと性能が著しく落ちるため、早めの点検と交換が必要です。
冷却性能の低下は見えないところで進行するため、定期的な点検と適切な交換が不可欠です。