助手席の家族や友人が、車がとまるたびに前後に首をふっている……
そんな光景にこころあたりはありませんか?スムーズに走っているつもりでも、最後の停止の瞬間にやってくるカックンという衝撃。
この「カックンブレーキ」は、同乗者に不快感をあたえるだけでなく、じつは、運転操作のわずかなズレをしらせるサインでもあります。
なぜ、ベテランドライバーの車はすいこまれるようになめらかにとまるのか。
いっぽうで、最新のハイブリッド車や軽自動車がなぜブレーキ操作にシビアといわれるのか。
この記事では、だれでも今日から実践できる「ブレーキのぬき」のテクニックを、徹底的に解説します。あなたの運転を「プロの領域」へとひきあげる、ブレーキング術をひもといていきましょう。
記事のポイント
カックンブレーキの正体は、停止時の急激な姿勢変化と摩擦特性
止まる直前にブレーキをゆるめる「抜き」の操作が解決のカギとなる
ハイブリッド車は、回生と油圧の切りかえにより挙動が乱れやすい
軽自動車は車重がかるく、構造的に前後のゆれが増幅されやすい
操作でなおらないばあいは、サスペンションやブレーキの故障も
目 次
どうしてカックンブレーキになってしまうのか?

「カックンブレーキ」が発生する最大の理由は、停止の瞬間にブレーキの力がぬけきっていないからです。
これをふせぐには、停止の数メートルまえからペダルをミリ単位でゆるめ、とまる瞬間にサスペンションの緊張をといてやる必要があります。
スムーズな操作は事故防止の基本であり、カックンブレーキを卒業することは、車両の挙動を完全にコントロールするための第一歩といえます。
車が停止するとき「カックンブレーキ」とは何ですか?
「カックンブレーキ」とは、走行している車が停止する直前、あるいは完全に停止した瞬間に、車体が前後におおきくゆれたり、乗員のからだが「カックン」と前方にゆさぶられたりする現象をさします。
同乗者にとっては不快感や車酔いの原因となり、運転者にとっては「運転があらい」とおもわれる要因にもなるため、非常に気を使つかポイントです。
この現象は、ブレーキ操作の終盤でブレーキの効きが急激につよまる、あるいは一定の制動力を維持したまま停止することで発生します。
本来であれば、車は停止にむかってなめらかに減速し、ソフトに時速0kmに到達するのが理想です。しかし、初心者のばあい、停止位置にあわせようとして最後にブレーキをふみ増してしまったり、ぎゃくにブレーキをゆるめるタイミングをのがしてしまったりすることで、この衝撃が発生します。
また、近年の交通安全の観点からも、スムーズなブレーキングは重要視されています。カックンブレーキはたんなるマナーの問題ではなく、車両の挙動をただしくコントロールできているかどうかのバロメーターでもあるのです。
カックンブレーキの原理は?

カックンブレーキが発生する物理的メカニズムは、おもに「慣性の法則」と「サスペンションの復元力」、そして「摩擦特性の変化」の3要素で説明できます。
まず、車が減速しているとき、車体には前方にすすもうとする慣性力がはたらきます。これにより、車のフロント部分がしずみこみ、リア部分がうきあがる「ノーズダイブ」という姿勢になります。
このとき、サスペンションのバネは圧縮され、もとの姿勢にもどろうとするエネルギーをたくわえています。車が停止してタイヤの回転がとまると、それまで車体をおしさげていた制動力が消滅するため、サスペンションが一気にもとにもどろうとします。この急激な姿勢変化が「カックン」という衝撃の正体です。
さらに、ブレーキパッドとローターの間にはたらく「摩擦係数」も関係しています。一般的に、物体がうごいているときの「動摩擦」よりも、とまる直前の極低速時の摩擦のほうがおおきくなる特性があります。
そのため、ブレーキペダルを一定のつよさでふみつづけていても、とまる直前にブレーキの効きが一段階つよまってしまい、カックンとなりやすいのです。ブレーキの安定性はきわめて重要ですが、この物理現象じたいはどんな高性能車でもさけてとおれない原理的なものです。
カックンブレーキの直し方は?

カックンブレーキを克服するための基本は、「停止直前のぬき」にあります。具体的には、停止する数メートルまえからすこしずつブレーキをゆるめていき、とまる瞬間にブレーキの圧力を「ゼロにちかい状態」までもっていく技術です。
- 初期制動 まずは必要な減速をおこなうために、はやめにしっかりとふみこみます。
- 調整 速度がおちてきたら、じわじわとペダルをもどしはじめます。
- 抜き 時速5km以下になったあたりから、さらにペダルを数ミリ単位でゆるめます。
- 停止 車がとまる「瞬間」に、ブレーキパッドがローターを「なでる」ていどのつよさまでゆるめると、サスペンションがゆっくりと復元し、無衝撃で停止できます。
この技術は、プロのタクシードライバーやバス運転手が日々実践しているものです。足首の関節をやわらかくつかい、ペダルを「ふむ」というよりは「のせる」意識をもつことが上達への近道です。
車が沈んだ時、ゆっくり止まる方法はありますか?
つよいブレーキをふんでノーズダイブ(車が前方にしずんだ状態)が発生してしまったばあい、そのままのつよさでとまると確実におおきな「カックン」がきます。これを回避するには「リリースのタイミングの適正化」がカギとなります。
車がしずみこんでいるということは、サスペンションにおおきなエネルギーがたまっている状態です。このエネルギーを「いっきに」ではなく「こだしに」にがしてやる必要があります。具体的には、停止する1~2秒まえから意識的にブレーキをゆるめ、車体の前後のかたむき(ピッチング)を水平にもどしながら停止位置にすべりこませるイメージです。
これを「ゆりもどしをふせぐブレーキ」ともよびます。もし停止位置がギリギリでブレーキをゆるめる余裕がないばあいは、完全にとまった瞬間に一瞬だけブレーキをフワッとゆるめ、タイヤをわずかにころがしてやることで、衝撃をにがすことができます。高度なテクニックですが、これができるようになると、どんな状況でも同乗者をおどろかせない「魔法のような停車」が可能になります。
どうしてカックンブレーキになってしまうのか?│ハイブリッドや故障など

「車をかえたらカックンブレーキがふえた」という話をききます。じつは、現代の車特有の構造や、経年劣化による車両側の要因が原因となっているケースもすくなくありません。
近年のハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は、モーターで発電して減速する「回生ブレーキ」と、従来のブレーキパッドでとめる「油圧ブレーキ」の2種類がそなわっています。ガソリン車よりもブレーキの「ぬき」のコントロールがシビアになるのは構造上の宿命ともいえます。
いっぽうで、もし最近きゅうにカックンブレーキがひどくなったと感じるなら、それは車両の故障や劣化のサインかもしれません。
ハイブリッドはカックンブレーキになりやすい?
ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は、構造的にカックンブレーキになりやすい傾向があります。その理由は「回生ブレーキ」と「油圧ブレーキ」のきりかえ(協調制御)にあります。
ハイブリッド車は、減速時のエネルギーを電気として回収するためにモーターによる「回生ブレーキ」を使用しますが、停止直前の極低速域(時速約5〜10km以下)では、回生ブレーキの力がよわまるため、物理的な「油圧ブレーキ」にきりかわります。このきりかえの瞬間に、ブレーキのききに段差が生じやすく、カックンとなりやすいのです。
とくに初期のハイブリッド車ではこの制御がギクシャクしていましたが、最新のモデルではトヨタ自動車をはじめとする各メーカーの努力により、非常になめらかになっています。しかし、構造上の特性はのこっているため、ハイブリッド車にのるさいは、ガソリン車よりもさらに丁寧な「ぬき」の操作がもとめられます。
軽自動車はカックンブレーキになりやすい?

軽自動車もまた、普通車にくらべるとカックンブレーキが発生しやすい条件をそなえています。これには「ホイールベースのみじかさ」と「車両重量のかるさ」が関係しています。
ホイールベース(前輪と後輪の距離)がみじかい車は、ピッチング運動(前後のゆれ)がクイックにあらわれやすい特性があります。シーソーをイメージするとわかりやすいですが、支点からの距離がみじかいほど、すこしの力でおおきくかたむきます。また、軽自動車は車重がかるいため、ブレーキの効きにたいして車体の挙動が敏感に反応します。
さらに、コスト面からサスペンションの構造がシンプルであることもおおく、ノーズダイブをおさえこむ力が普通乗用車よりよわいばあいがあります。軽自動車を運転するさいは、これらの特性を理解し、より「はやめの減速」と「ながい距離をつかったゆるやかなぬき」を意識することが、同乗者に安心感をあたえるポイントとなります。
カックンブレーキは運転が下手だから?

日常的にカックンブレーキを連発しているばあい、それは「車の限界や特性を理解しきれていない」という意味で、運転技術の向上のよちがあるといえます。しかし、これは「センスがない」ということではありません。たんに「コツをしらないだけ」であることがほとんどです。
カックンブレーキになる原因のおおくは、視線がちかく、停止位置のまぎわであわててブレーキ操作を完結させようとすることにあります。じょうずなドライバーは、はるか手まえから停止位置を予測し、ブレーキペダルをふむつよさを山なりのカーブ(放物線)のように管理しています。
カックンブレーキを卒業することは、たんに同乗者を快適にするだけでなく、余裕をもった予測運転ができている証拠でもあるのです。
カックンブレーキになるのは故障?

「むかしよりもカックンブレーキになりやすくなった」「急にブレーキがカクンときくようになった」というばあいは、運転技術の問題ではなく、車両の不具合(故障)の可能性があります。
考えられる原因としては、以下のものがあげられます。
・ ブレーキパッドの摩耗や劣化:パッドの表面が変質(ジャダーの発生)していると、効きが不均一になります。
・ サスペンション(ショックアブソーバー)の抜け:振動を吸収するショックアブソーバーがへたっていると、ノーズダイブが過大になり、ゆりもどしがはげしくなります。
・ ブレーキのひきずり:ピストンのうごきがわるくなっていると、微細なコントロールができなくなります。
もし違和感を感じたら、すみやかにディーラーや整備工場で点検をうけるべきです。「自分の腕がわるくなったのかな?」となやむ前に、プロのメカニックに診断してもらうことも大切です。
どうしてカックンブレーキになってしまうのか?│総括
「カックンブレーキ」を卒業することは、たんに運転がうまくなること以上の価値があります。
それは、車の動きを理解し、同乗者の快適さを第一にかんがえる「やさしさ」のあらわれにほかなりません。
停止の瞬間にわずかにペダルをゆるめる――そのコンマ数ミリのコントロールが、車内の空気をおだやかにし、愛車の足まわりをいたわることにもつながります。
ハイブリッド車特有のクセや、消耗品の劣化など、ブレーキをとりまく環境はつねに変化しています。ただしい知識と繊細な操作を身につけ、どんな車でも「カックン」とならない、スマートなドライビングをめざしましょう。