アクセルを戻したときにマフラーから「パンッ」と大きな音が響く現象。
それが、アフターファイヤーです。
これは、エンジン内部で燃え残った未燃焼ガスが排気管内で燃えることで発生し、特にバイクやスポーツカーでよく見られます。
アクセルを戻すタイミングで起きやすいこのアフターファイヤーは、一見すると派手な演出のように感じるかもしれませんが、実はエンジンや燃料供給系統にトラブルのサインが潜んでいることもあります。
本記事では、アフターファイヤーの原因や対策について解説していきます。
事のポイント
エンジン内で燃焼するべき混合気が、排気管に流れ込み爆発することで発生する
混合気が濃すぎるなどの、燃料供給系の問題が考えられる
点火プラグの点火が遅れるなど、点火系の問題が考えられる
排気漏れなど、排気系の問題が考えられる
ECUの不具合などの問題が考えられる
目 次
アクセルを戻すとアフターファイヤーが出る

アフターファイヤーは、燃費の悪化や排気系の損傷につながるだけでなく、最悪の場合、火災を引き起こす危険性もあります。
このような問題が発生した場合は、放置せずに速やかに車両の点検を行い、問題の早期発見と修理をお勧めします。
アフターファイヤーが出る原因は何ですか?
アクセルを戻すとアフターファイヤーが出る主な原因はいくつか考えられます。
まず、一般的に考えられるのは、燃料の供給過多や点火タイミングの不具合です。
以下に具体的な要因を挙げてみましょう。
- 燃料供給系の問題
【混合気が濃すぎる】
燃料が過剰に噴射されていると、燃焼しきれなかった混合気が排気管へ流れ込みアフターファイヤーを起こします。
インジェクターの不良、燃料圧レギュレーターの故障、エアフローセンサーの誤作動などが原因として考えられます。
【燃料漏れ】
燃料ラインからの漏れも、排気管内に余分な燃料を供給する原因となります。
燃料ホースの劣化や亀裂、インジェクターOリングの損傷などを確認する必要があります。 - 点火系の問題
【点火時期の遅れ】
点火プラグの点火が遅れると、燃焼が完了する前に排気バルブが開き、未燃焼ガスが排気管へ排出されます。
ディストリビューター(古い車種の場合)、クランク角センサー、イグニッションコイルなどの不具合が考えられます。
【点火ミス】
点火プラグの劣化、プラグコードの断線、イグニッションコイルの不良などにより、混合気がうまく着火しない場合、未燃焼ガスが排気管へ排出されます。 - 排気系の問題
【排気漏れ】
エキゾーストマニホールドやマフラーに亀裂や穴があると、新鮮な空気が排気管内に侵入し、未燃焼ガスと混合して爆発を起こす可能性があります。
【触媒コンバーターの不具合】
触媒コンバーターが正常に機能していないと、未燃焼ガスが処理されずに排気管へ排出され、アフターファイヤーの原因となることがあります。 - その他
【エンジンコンピューター(ECU)の不具合】
ECUが適切な制御を行えていない場合、燃料噴射量や点火時期が狂い、アフターファイヤーが発生する可能性があります。
【エンジン内部の損傷】
ピストンリングやバルブの摩耗、損傷により圧縮漏れが発生すると、未燃焼ガスが排気管へ排出されやすくなります。
アフターファイヤーは見た目の派手さ以上に、エンジンや排気系に負担をかける可能性があるため、早めの対策が重要といえます。
キャブ車のアフターファイヤーの原因は?
キャブレター搭載車でアクセルを戻した時に「パンッ!」「ポンッ!」とマフラーからアフターファイヤーが聞こえる場合、いくつかの原因が考えられます。
キャブレターというアナログな機構であるがゆえに、調整のずれや経年劣化による不具合が生じやすい点がポイントです。
- 混合気が濃い
【フロートレベルの異常】
フロートレベルが高すぎると、キャブレター内で過剰に燃料が供給され、混合気が濃くなります。
フロートの劣化や、ニードルバルブの不具合が考えられます。
【ニードルバルブの詰まり】
ニードルバルブが完全に閉じないと、燃料が過剰に流れ込み混合気が濃くなります。
【アクセルポンプの調整不良】
急激なアクセル操作時に燃料を供給するアクセルポンプが過剰に燃料を噴射している場合も、混合気が濃くなることがあります。 - 混合気が薄い
【パイロットスクリューの調整不良】
低速時の混合気を調整するパイロットスクリューの設定が薄すぎると、アクセルオフ時に未燃焼ガスが排気管へ流れ込みやすくなります。
【エアカットバルブの不具合】
アクセルオフ時に燃料をカットするエアカットバルブが正常に動作していないと、余分な空気が入り込み混合気が薄くなります。
【スロー系統の詰まり】
スロージェットや通路の詰まりにより、十分な燃料が供給されず混合気が薄くなることがあります。 - 点火系の問題
【点火時期の遅れ】
ディストリビューターのポイントやコンデンサーの劣化、進角装置の不具合により、点火時期が遅れるとアフターファイヤーが発生しやすくなります。
【点火プラグの劣化】
点火プラグの劣化やギャップの不適切な調整は、点火ミスを引き起こし、未燃焼ガスを排気管へ送り込みます。
【プラグコード/イグニッションコイルの劣化】
プラグコードの断線やリーク、イグニッションコイルの劣化も点火ミスにつながり、アフターファイヤーの原因となります。 - 排気系の問題
【排気漏れ】
エキゾーストマニホールドやマフラーの亀裂、接合部の緩みなどから空気が混入すると、排気管内で未燃焼ガスが爆発しやすくなります。
【マフラー内部の損傷】
マフラー内部の破損により排気抵抗が変化し、アフターファイヤーが発生することがあります。
キャブ車は、これらの要素が複雑に絡み合ってアフターファイヤーが発生するため、原因を特定するには専門的な知識と経験が必要です。
アクセルオフにするとアフターファイヤー

アクセルを戻した時、つまりアクセルオフのタイミングでアフターファイヤーが発生する主な原因は、以下のように整理できます。
- 燃料供給の過剰または不適切な燃調
アクセルオフ時には、通常は燃料供給が一時的にカットされる仕組みになっています。
しかし、セッティングや不具合によって、アクセルオフ時でも燃料が供給され続ける場合があります。
この余分な燃料が排気管へ流れ込み、マフラー内で燃焼することで「パンッ」という爆発音=アフターファイヤーが発生します。 - 点火システムの不調
点火プラグの経年劣化やプラグかぶり(カーボン付着など)により、点火がうまくできなくなると、エンジン内で不完全燃焼が起こりやすくなります。
不完全燃焼した未燃焼ガスがマフラーへ流れ、そこで発火することでアフターファイヤーが発生します。 - 点火タイミングのズレ
点火タイミングが遅れると、燃焼完了前に排気バルブが開き、未燃焼ガスが排気管へ流れます。
アクセルオフ時は特に空燃比が変わりやすく、マフラー内の高温で未燃焼ガスが再燃焼し、アフターファイヤーが発生しやすくなります。 - 排気系統や吸気系の異常
エアクリーナーの汚れやマフラー内の高温、排気管の隙間などが未燃焼ガスの発火を助長する場合があります。 - ECUやセンサーの不具合(電子制御車の場合)
最近の車両ではECU(エンジン制御ユニット)やセンサーの不具合によって、アクセルオフ時の燃料カットが適切に作動しないこともあります。
こうしたトラブルも、アフターファイヤーの要因となります。
アクセルオフ時のアフターファイヤーは、車両の状態やメンテナンス状況を確認するきっかけにもなります。
定期的な整備や適切なセッティングが、トラブル回避のポイントです。
アクセルを戻すとアフターファイヤーが出る│対処法

アクセルを戻した時に「パンッ!」「ポンッ!」といった破裂音がマフラーから聞こえるアフターファイヤー。
これは、本来エンジン内で燃焼するべき混合気が排気管に流れ込み、高温の排気管内で爆発することで発生します。
原因と対策法を解説します。
マフラーを変えるとアフターファイヤーはひどくなりますか?
マフラー交換とアフターファイヤーの関連性は、少々複雑です。
単純に、マフラーを変えるとアフターファイヤーが悪化するとは言えません。
場合によっては改善されることもありますが、悪化したり、新たに発生する可能性もあります。
■アフターファイヤーが悪化するケース
【抜けの良いマフラーへの交換】
純正マフラーより排気抵抗の少ない社外マフラーに交換すると、排気ガスの流速が上がり、エンジン内部の圧力が変化します。
この変化によって、燃焼状態が不安定になり、未燃焼ガスが排気管へ排出されやすくなる場合があります。
特に、キャブレター車や古いインジェクション車では、この影響を受けやすい傾向があります。
【マフラーの口径が大きすぎる場合】
エンジンの排気量に対してマフラーの口径が大きすぎると、排気効率が変化し、アフターファイヤーを誘発する可能性があります。
適切な排気効率を維持するためには、エンジンの排気量とマフラーの口径のバランスが重要です。
■アフターファイヤーが改善されるケース
【適切なバックプレッシャーを確保できるマフラーへの交換】
エンジンによっては、ある程度の排気抵抗(バックプレッシャー)が必要な場合があります。
適切なバックプレッシャーを確保できるマフラーに交換することで、燃焼状態が安定し、アフターファイヤーが改善されることがあります。
【純正マフラーの劣化による排気漏れ】
純正マフラーが劣化し、排気漏れを起こしている場合、社外マフラーに交換することでアフターファイヤーが改善されることがあります。
ただし、アフターファイヤーの根本原因は排気漏れなので、マフラー交換ではなく排気漏れの修理が本来の対処法です。
■アフターファイヤーが新たに発生するケース
【ECUのセッティングが不適切な場合】
社外マフラーに交換した際に、ECUのセッティング変更が必要な車種があります。
適切なセッティングを行わないと、燃料噴射量や点火時期が最適化されず、アフターファイヤーが発生する可能性があります。
マフラー交換によって排気効率やエンジン内部の圧力バランスが変化し、潜在的な問題が顕在化する場合があります。
アフターファイヤーが発生している場合は、マフラー交換の前に、まずはその原因を特定し、適切な修理を行うことが重要です。
アフターファイヤーの直し方
アフターファイヤーを直すためには、いくつかのステップを踏んで問題の原因を特定し、それに応じた対策を講じる必要があります。
以下に、アフターファイヤーを解消するための具体的な方法を挙げてみましょう。
- 燃料供給系の問題
【インジェクターの点検・交換】
燃料漏れや過剰噴射があれば、インジェクターの清掃、もしくは交換が必要になります。
【燃料圧レギュレーターの点検・交換】
規定値以上の圧力で燃料が供給されている場合は、レギュレーターの交換が必要です。
【エアフロセンサー/O2センサーの点検・交換/清掃】
誤った信号を送っている場合は、センサーの清掃もしくは交換が必要です。
【キャブレター車の場合】
フロートレベルの調整、ニードルバルブの清掃・交換などが必要です。 - 点火系の問題
【点火時期の調整】
ディストリビューター、クランク角センサー、カム角センサーなどを点検し、適切な点火時期に調整します。
【点火プラグの交換】
化している場合は新品に交換します。適切な熱価のプラグを選択することも重要です。
【プラグコード/イグニッションコイルの点検・交換】
断線、リーク、劣化があれば交換します。 - 排気系の問題
【エキゾーストマニホールド/マフラー/排気管の修理/交換】
亀裂や穴があれば、溶接修理もしくは部品交換を行います。ガスケットの交換が必要な場合もあります。
【触媒コンバーターの交換/清掃】
詰まりや劣化が酷い場合は、交換が必要になります。 - エンジン制御系の問題 (電子制御車)
【エンジンコンピューター(ECU)の点検/修理/交換】
ECUの故障が原因の場合は、修理または交換が必要になります。
【各種センサーの点検・交換】
誤った信号を送っているセンサーを特定し、交換します。 - エンジン内部の損傷
【ピストンリング/バルブの交換/エンジンオーバーホール】
圧縮漏れが原因の場合は、ピストンリングやバルブの交換、場合によってはエンジンオーバーホールが必要になります。
これらの手順を通して、アフターファイヤーが改善されることが期待できます。
総括│アクセルを戻すとアフターファイヤーが出る
この記事では、アクセルを戻すとアフターファイヤーが出る現象の原因と対策について説明しました。
アフターファイヤーは、エンジン内部で不完全燃焼した未燃焼ガスがマフラー内で発火することで起こり、エンジンや排気システムの異常を示します。
原因としては、燃料供給と空気の比率の不適切さ、点火系統の不調、排気システムのリークなどが挙げられます。
これらの原因を特定し、適切な整備やセッティングを行うことで、アフターファイヤーの発生を防ぐことができます。